小さな功労賞
会社帰りに駅直結のデパ地下に寄ったら珍しくいつもの行列が無かった。
飾り気のない,、しかしそれゆえに潔く勝負している風格の焼き菓子が並んでいて、大抵その前に何人もの人が並んでいる。
功労賞 -- 10年ほど前からか「主婦休みの日」という言葉を耳にするようになったが、全く無縁だったと唐突に勝手な授賞理由を作り、自分に記念品を贈ることにした。
焼き菓子.・フィナンシェの名前は、金融に関わるところからきていて金塊に形を似せたとも言われているから都合がよい。
バターたっぷりのリッチな味だった。水分が飛んですぐに乾燥しそうな食感ではないが、その風味も堪能してほしいために賞味期限が短いのだろうか。
私がお菓子作りを始めた頃は(40年前)フィナンシェ型は手軽に入手できるものではなかった。いや、そもそも角ばったフィナンシェは近所の洋菓子店で売っていたのか疑問だ。焼き菓子といえばクッキーかマドレーヌ、そうそう、甘食があった。シフォンケーキは未だ見ぬ存在だったはず。
漢字もろくに読めない頃からマドレーヌを焼き、記憶に残る限りでは小学校二年生の時に担任の先生へプレゼントした。お世話になり、体調等色々心配してくださったお礼として。
当時はシリコンでもステンレスでもない、厚手アルミカップだった。
材料4-5個の丸くてかわいいお菓子。粉、砂糖、バター、卵とレモンかバニラエッセンス。それが私のマドレーヌだ。
当時、もし金塊を模した型が手に入っても、イカツイ形で盛り上がりのない、強い茶色のお菓子はきっと作らなかっただろう。