King Arthur Flour 2 --アメリカのパン焼き事情--

大量生産で何でも効率化、簡略化の道を行くアメリカ、と勝手に思っていたが、実はそうでもなかったりする。アメリカ人は台所を汚さない、料理をしない、というイメージは大外れではないが、知り合いにはピザを焼いたり、ラビオリを生地から作る人がいる。もちろん、スーパーの棚に置いてあるカップケーキミックスは、特に子供の持ち寄りには外れ無しの国民食だし、感謝祭などお祝いの宴でマッシュポテトが箱から出した粉で出来ていることも全く珍しくない。

私が高校で受けた家庭科(ホームエコノミクスという名前だった)の授業では、いちごショートケーキを作るというのでワクワクしていたら、パンケーキもクラッカーも作れる、やはり箱に入った粉のミックスが缶入りのホイップクリームと一緒に配られ気分は急降下した。のちにアメリカでStrawberry shortcakeと言えばいわゆるスポンジではなく、ビスケット生地であると知ってようやく納得。色々な「常識」が覆された頃だったが、10代だったからあっさりと塩味のきいたビスケット&酸っぱいいちご&かなり甘いクリームもどきを受け入れたのか。

 

ではアメリカでパンを焼くとなるとどんな選択肢が一般的にあるのだろうか。

もちろんスーパーにはBread Mixという固形物すべてが軽量されている便利な箱が沢山置いてある。コーンブレッドも雑穀パンも、グルテンフリーのパンも、ビールを入れて焼くだけのミックス等色々売っている。

しかし、知人に聞くと家でパンを焼く人もいて(だからKing Authurのような会社が存在し続けるのであろう)、中には種を継いでいる人もいるとか。

そこでKing Arthur Flour社のレシピより、アメリカのホームベイキング事情を検索してみた。レシピのカテゴリーにBreadとSourdoughが別に存在していることにまず驚いた。

サワードゥブレッドはサンフランシスコの名物で、クラムチャウダーなどと一緒に食べられる。

特に珍しい製法で酵母を起こしているわけではないのでなぜ、サンフランシスコなのかは分からないが、暑すぎず、高湿な気候が比較的パン酵母に適した環境であったようだ。そしてその包装されたイーストが手軽に入手できるようになった今でも地元の自慢として残っているのかもしれない。

 

自家製天然酵母=WIld yeast starterとサワードゥ=Soufdoughは同じではないが、インスタントドライイーストに比べれば双子のようなものだと拡大解釈して、King Authur Flour社のHPでレシピを検索した。

 

なんと、レシピの中にDiscard=捨てるの単語が

 

1日目:同量の粉と水(4オンスずつ)用意して大きめの容器に入れてよく混ぜる。ゆるく蓋をして室温で24時間放置。 これをスターターと呼ぶ

2日目:ほとんど変化していないスターターの半分を捨てる(いきなり)。残したスターターに4オンスずつの粉と水を入れてよく混ぜる。また24時間放置。

3日目:1日2回の作業開始。同じ作業の繰り返しだが、スターターはあくまでいつも4オンスで残りはすべて捨ててから4オンスずつ粉と水を混ぜる。

4日目:上に同じ。

5日目:上に同じ。ただし最後にもう一度スターターを4オンスだけキープして同量の粉と水を追加投入。6-8時間室温で放置したら晴れてパン作りへ移行

使い残しには週一で継ぎ足しと書いてある。

 

私の酵母おこしはかわいいもので、数十グラム単位でしか起こさない。それでもおかしなにおいがしない限り「捨てる」作業工程はない。

 

大真面目に書いてあるレシピを前に苦笑してしまったが、かの地では珍しいことではないのだろうか。4オンス=113gの粉と水をそれぞれ足し続けたら確かに大量の種ができてしまうが、それ以下で作ることのほうが(少量の計量の方が)かえって手間ということなのだろうか。

 

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ちょっとびっくり

そういえば、日本サイズの生姜を買おうとしたら、お会計担当者があきれて、こんな小さいので良ければタダで持って行ってとお金を受け取らなかったことがある。